この記事では、「デューン」シリーズに出てくる用語である「黄金の道」について解説します。
- デューンの世界の人類が直面している危機
- 「黄金の道」の目的
- 「黄金の道」の結果、何が起きたのか
- 「黄金の道」はどうやって始まったのか
【デューン】「黄金の道」について解説
「黄金の道」は、クイサッツ・ハデラッハとベネ・ゲセリットだけに見える、さまざまな「未来の出来事」を予言するものであった。
しかし、より深いところでは、
「人類が遭遇する無数の因果の糸の中から最適な道を明らかにしたもの」である。
Contents
これ以降は、「デューン」シリーズの根幹のネタバレです。
人類の危機
ポール・アトレイデスと息子のレト2世は、予知能力によって、
人類が帝国主義の硬直した階級構造の中で停滞し、既存の世界(=宇宙)に留まったままであれば、いづれは滅亡すること
を予見していた。
帝国の人口は何兆人にも及んでいたが、レト2世の統治によって、
人類が単一の利害関係者によって支配されている空間の中に閉じ込められていること
が明らかにされた。
小説では、「人類の探査と成長の欠如が、人類を危機に陥れ、最終的には人類の滅亡につながるということ」がしばしば指摘されていた。
『「人類の平和への希求」と「変動の必要性」の対立』は、
『デューン』シリーズ全体のテーマであり、第1作目以降のすべての作品で探求されている。
神皇帝レト2世の目標は「人類に教訓を教える(=庇護された安全がどんなに遅れても結局のところ死と等しいということ)」ことであった。
「黄金の道」の目的

「黄金の道」には、主に2つの目的があった。
レトの平和
「レトの平和」は約3500年続いた。
帝国のどの利害関係者も互いに戦争することができなかった。
レト2世の治世では、
- スパイスの生産制限
- スパイスの備蓄
- 惑星アラキスのテラフォーミング
が行われた。
テラフォーミングによりワームは全滅し、スパイスの不足により宇宙旅行が制限され、人類を惑星に留まらせた。
レト2世は数世紀にわたって意図的な圧政を続けたが、レト2世は死ぬと、レト2世の体からサンドトラウトを放ち、新たなワーム・スパイスサイクルが始まった。
その後、人類は既知の宇宙を飛び出し(=大離散)、人類の人口、領土、文化の拡大と多様化が始まり、人類の存続が長引いた。
またこのレト2世による圧政により、人類は自分の頭で考え、カリスマ的指導者を信用しない教訓になった。
育種計画

育種計画とは、シオナ・アトレイデスによって初めて実現された育種プログラムによって遺伝子を導入し、人類を予知能力から解放しようとする試み。
これは、その遺伝子を持つ者が予知能力者に狩られるのを防ぐためであった。
「黄金の道」の始まり

ベネ・ゲセリットは長い間「黄金の道」の存在を予見していた。
ポール・アトレイデスが達成できなかった「黄金の道」
「黄金の道」達成へのジレンマは、ポール・アトレイデスが 「命の水」を摂取して初めて明らかになった。
それは、ポールが 「ベネ・ゲセリット」の計画より1世代早く生まれたため、究極の 「クイサツ・ハデラッハ」ではなかったことが原因かもしれない。
ポールは予知能力、帝国政治、戦争などの陰謀や危険から遠く離れた、普通の生活への焦がれを抱いていた。
また、ポールは、父であるレト公爵の死と、アトレイデス家が多くの人に裏切られたことに悩まされていた。
人間とサンドワームのハイブリッドになった「神皇帝レト2世」

ポールの子供であるレトとガーニマは、先祖代々の記憶によって、生まれた瞬間から 「黄金の道」の存在を知っていた。
しかし、父親のポールとは異なり、レトとガーニマは「黄金の道」を始めることを選択した。
レトは因果の糸を見通すことができるため、サンドトラウドの皮膚を採用し、人間とサンドウォームのハイブリッドである長寿の神皇帝になった。
この不滅の肉体によって、レト2世は人類という種全体を導くのに必要な時間と力を手に入れることができた。
レト2世の圧政
3,500年もの間、レト2世は帝国内を平穏に保つため、政治だけでなく遺伝子の品種改良や遺伝子操作を含む究極の専制政治を行った。
レト2世は、テラフォーミングの過程でワームの生息地を根絶し、残ったスパイスをため込み、人が住む惑星のすべての惑星の貯蔵物を支配した。
その結果、レト2世は極端なインフレを利用して、政治と輸送・資源の完全な支配を実現した。
予言者から「見えない人類」の誕生
レト2世は、
- 人間の全遺伝的記憶
- ベネ・ゲセリットの森羅万象の知識
- 無制限に強化された人間の知能
- 予知能力
といった並外れた力を駆使して、全人類を自滅から遠ざける方向に導いた。
レト2世は、最終的に自分の死を利用して「黄金の道」をさらに前進させることだった。
また、シオナ・アトレイデスはこの能力を用いて予言者であるレト2世を倒すことに成功し、予言者が「見ることができない」人間の系統を作り出した。
「黄金の道」での人類の進化
実際、未知の宇宙へ飛び出した人類(大離散)は爆発的に成長し、旧帝国が遭遇したことのない知識や技術を持ち帰った。
さらに「黄金の道」では人類の身体能力が進化し、
- 反射神経
- 神経反応
- 身体運動
が前時代より格段に速くなった。
人類を脅かす「大いなる敵」について (憶測)

レト2世の未来視では、人類を脅かす「大いなる敵」については、あまり詳しく語られていない。
「思考機械」である可能性
「デューン」シリーズの原作者であるフランク・ハーバートは、ポールとレト2世が見た未来視に「人間は機械から逃げている」と言及している。
おそらくイクス製の機械は、人間を探し出して破壊するためだけに設計され、予知能力を備えているため、必ず全人類を追い詰めることができるのだ。
全く別の異星人である可能性
もうひとつの可能性は、大敵が別の銀河系、あるいは別の次元からやってきた優れた異星人であることだ。
「黄金の道」の真の意味 (憶測)
思考機械が戻ってくるということは、映画「デューン」の時代よりも大昔にあった出来事である「バトラーの聖戦」(思考機械との戦争)を彷彿とさせる。
もし、「大いなる敵」が思考機械ならば、再び思考機械と戦争することは「人類が失敗のサイクルの中にいて、絶えず歴史とその過ちを繰り返していること」を意味する。
そうすると、「黄金の道」とは、このサイクルを断ち切るための方法であり、人類の過ちを修正することで、過ちをもたらす人類の過ちを修正することであるのかもしれない。