【Netflixドラマ】「サンドマン」「コンスタンティン」の繋がりを解説

DC/Vertigoの世界観において、最も孤独で、かつ最も人間臭い魔術師であるコンスタンティンと、永遠なる存在である夢の王サンドマン。

サンドマンとコンスタンティンの関係性を解説する記事になります。

【総力解説】コンスタンティンとサンドマン:交差する魔術と夢の系譜

80年代後半、DCコミックスはアラン・ムーアの『スワンプシング』の成功を皮切りに、カレン・バーガー編集のもと、大人向けのダークなサブラインを展開しました。

スワンプシング
スワンプシング

スワンプシングは、爆発事故で死んだ科学者アレックの意識を「沼の植物」が取り込み、自分を人間だと思い込んだ植物の化身です。

正体は人間ではなく、自然界の代弁者として植物を操る強大な力を持っています。

これが後の伝説的レーベル「Vertigo(ヴァーティゴ)」へと発展します。

この流れの中で、夢の王「モーフィアス(サンドマン)」と、皮肉屋の魔術師「ジョン・コンスタンティン」は、同じ空気を吸う隣人として誕生しました。

一見、住む世界の異なる彼らですが、その魂はDCユニバースという広大な揺りかごの中で密接に繋がっていたのです。

DCユニバースという共通の土壌と初期のクロスオーバー

失われた「繋がり」の記憶

コミック版『サンドマン』の初期において、モーフィアスの物語は驚くほどDCユニバースと地続きでした。

ジョン・コンスタンティンは初期エピソードにゲスト出演し、モーフィアスもまた『スワンプシング』に姿を見せています。

例えば、後のエピソードで言及されるシリアルキラー「ファミリーマン」が『ヘルブレイザー』から来ているように、当時の作家陣は互いのキャラクターを物語の歯車として巧みに共有していました。

この時期の彼らは、同じ暗闇を共有する戦友のような存在だったと言えます。

映像化における変遷とキャラクターの「デタッチ」

ジョンからヨハンナへ:世界線の分岐

Netflix版『サンドマン』において、コンスタンティンが「ヨハンナ」として登場したことは大きな転換点でした。

制作陣は作品を既存のDCUから切り離し、独自の神話として構築するために、ジョンではなく先祖の名を冠したジョアンナ(ヨハンナ)を採用しました。

これは単なる性別変更ではなく、権利関係を超えて「サンドマン独自の世界」を確立するための戦略的な選択でした。

コミック版から変わらない先祖のレディ・ジョアンナに対し、現代のヨハンナはより洗練されたプロフェッショナルな姿で描かれています。

バットマンに例える配役の多様性

このキアヌ・リーブス版のジョンと、ジェナ・コールマン版のヨハンナの違いは、例えるならマイケル・キートンのバットマンとロバート・パティンソンのバットマンのようなものです。

同じアイデンティティを背負いながらも、演じる役者や世界線のトーンによって、キャラクターは全く異なる輝きを放ちます。

労働者階級の泥臭さを体現するジョンと、ハイソサエティをも渡り歩くヨハンナ。

この違いを「ヨハンナはジョンの娘である」と解釈することで、一族が歩んできたタイムラインの進化として捉えることも可能になります。

映画版が描いた「クズの美学」と「人間の脆弱さ」

偽善という名の救い

映画『コンスタンティン』においてキアヌ・リーブスが演じたジョンは、純粋な正義漢ではありません。

彼は肺がんに侵され、自殺未遂という過去ゆえに確定した「地獄行き」を免れるため、神への点数稼ぎとして悪魔を払います。

この「自分のための善行」という極めて人間的で情けない動機こそが、彼の最大の魅力です。

自分をクズだと認め、それでも死の恐怖に足掻くジョンの姿は、完璧なヒーロー像よりも遥かに深く観客の心に突き刺さります。

小道具と設定が紡ぐ奥行き

映画版では、詳細な説明を省きながらも「地獄はすぐ傍にある」という映像表現や、中二心をくすぐる魔法のガジェットによって、独自の世界観をダイナミックに提示しました。

「ちょっと地獄を見てくる」と軽口を叩きながらも、戻ってきたときには汗だくで憔悴している。

そんな魔法の「代償」に苦しむ描写は、コミック版から受け継がれたコンスタンティン一族の伝統的な業そのものです。

夢の王による「償い」と二代目のコリント人

失われた愛への謝罪

ドラマ版において、ドリーム(モーフィアス)が2代目のコリント人を再創造した行動には、深い意図が隠されています。

かつてドリームの砂が人間界に放置されたことで、ジョンの恋人レイチェルは死に至りました。

ヨハンナ(ジョン)が抱える「大切な人を危険にさらす」という孤独な呪縛は、ドリーム自身の過失から生まれたものでもありました。

ドリームは、彼女の人生を狂わせたことに対して、静かな責任を感じていたのです。

不器用なキューピッドとしてのドリーム

ヨハンナの「先祖には愛を与え、私には本をくれた」という皮肉に対し、ドリームは2代目コリント人に息子オルフェウスのような「愛のためにルールを破るロマンチスト」の性格を投影しました。

これにより、ヨハンナが危険にさらされない強靭なパートナーを得られるよう、密かに願いを叶える機会を与えたのです。

これは、神のような高みにいるドリームが、一人の魔術師に対して示した最大限の救済であり、不器用な優しさの形でした。

結論:形を変えて受け継がれる「コンスタンティンの魂」

中指を立てて歩き続ける者たち

コンスタンティンとサンドマン。

二人の関係は、長い年月をかけて「共有された恐怖」から「静かな救済」へと変化してきました。

どれほど世界線が異なり、名前や姿が変わろうとも、コンスタンティンの根底にあるのは「孤独の中で足掻き、最後には自分の身を削って誰かのために戦う」という強烈な意志です。

そして夢の王は、その不完全で愛おしい人間の営みを、今日も夢の境界線から見守り続けているのです。

コンスタンティンの「弱さ」とドリームの「変化」が交差する、非常にエモーショナルな物語としてまとまりました。